第1回 XR創作大賞用作品『ビター・スイーツ・チョコレ 2021/08/29 11:21 Share on Facebook Copy URL Report 第1回 XR創作大賞用作品『ビター・スイーツ・チョコレート』(7/7)※大賞のレギュレーションに編集したものになります。【八月二日】あれから約半年後の今日。彼女からはただの一度の連絡もなかった。あったのはSNSサイトから『該当のアカウントは削除されました』という、無機質な通知だけだった。(あなたが私に”これ”を残してくれた意味、少しだけわかるよ……)最後のページをめくり終え、本を閉じる。台座の上に置いた本は役目を終えて疲れた人のように静かに佇み、再び訪れるであろうその時を待つようだった。(考え方は少し違っていたけど、私もあなたとずっと一緒に居たい気持ちは同じだったよ。だから――)その姿はどことなく、私のよく知るあの人に、たくさんの時と、思い出を過ごした彼女に似ていた。「――だから……『さよなら』は言わないよ。それじゃあ、『またね』……今度は私の話を聞かせてあげるね」こうして、彼女の記憶の旅は終わった。だけど、これで終わりではない。何故なら、ここはVR世界――彼女との旅は何度でもできるのだから……。次は私の話をしよう。たくさんのチョコレートと珈琲を手に、来年の今日はそのお返しをしよう。そう決意し、私はログアウトボタンを押した。