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第1回 XR創作大賞用作品『ビター・スイーツ・チョコレ

第1回 XR創作大賞用作品『ビター・スイーツ・チョコレート』(6/7)
※大賞のレギュレーションに編集したものになります。

「病院の先生もね、ビックリしてたんだよ。『こんなことがあるなんて……!』って、お前は一体何なんだって顔してたよ」
「そう、なんだ……」
「……だからね、そんな顔しないで」
「っ!?」

彼女に言われてハッと我に返る。
途端、頬に感じる水気。反射的に手を持っていこうとしたが、VRゴーグルのせいで手が届かない。
頬を伝って顎に溜まって――膝に落ちたそれの存在を私はようやくになって自覚した。
私は……いつの間にか泣いていたのだ。
彼女に言われるまで全く気付かないほどに、涙を流し続けていた。

「あはは。あなたのことだから泣いてるだろうなぁって思ったけど、やっぱりか」
「どうして……」
「ここでそれを聞く? これでも、あなたの事が大好きで、ずっと隣で見ていたんだよ。それくらいはわかるよ」

ニコリと笑う彼女。その笑顔は私のよく知る――まるで子供が悪戯を画策していそうな、ニヤついたものだった。

「だからね。きっとあたしが死んだ後にあなたがこの事を知るとすっごい悲しんで……辛い思いをするのもわかってたから、ちゃんと言わなきゃって思ったんだ……あたしの全部を。今まで一緒に居てくれてありがとう。あなたのおかげで、あたしは最期まで自分らしく生きられたよ。こうして最後に来てくれてありがとう。あなたに見送ってもらえて、あたしは本当に幸せだよ」
「…………」
「あたしの話を聞いてくれてありがとう。これで、もう思い残すことはなにもないや――」

そう言って、彼女は静かに目を閉じた。
その後、彼女の声を聞くことは二度となかった。

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